プロ野球の抱える諸問題を考えるための基本用語を選び解説しております。

合併問題の経緯(年表・解説

第一回:選手雇用問題に関する用語集(04/12/20)

ドラフト

 新人選手獲得の際、抽選によって交渉権を各チームに与える制度。新人選手選択制度。戦力の不均衡と年俸の高騰を抑制するために1965年に導入される。第1回のドラフト会議は、12球団の代表が、1番から12番までの順位をつけた新人選手を対象に、第1次選択を行い、第2次選択は、公式戦での下位球団から両リーグ交互に、さらに逆の順序で計2回の指名を行うというもの(ウェーバー制)。66年は年に2回実施されたが翌年から1回に戻された。田淵問題、江川問題、新垣問題など多くの問題点を抱えつつも球団間の戦力の均衡に大きな役割を果たす。選手の人権問題や職業選択の自由に抵触するとの理由から93年に逆指名制度(01年からは自由枠制度)が導入されるなどドラフトの自由化が進み、今日その意義が薄れつつある。

逆指名制度

 93年より導入された新人選手獲得制度。当時巨人軍オーナーであった渡辺恒雄氏の「新リーグ結成も辞さない」とのドラフト制度の廃止の強い圧力により導入が決定された。指定枠採用選手(1位、2位)の指名選手について、社会人、大学生の場合、選手に希望球団を事前調査し、重複した場合は、(1)選手の希望球団、(2)指名順位、(3)くじびき、の順で指名球団を確定する。有力な新人選手獲得の為の事前の獲得競争が激化し、多額の裏金の存在が指摘されている。またドラフトの形骸化を招き、ドラフトによる戦力均衡の機能が失われることとなった。

自由枠制度

 逆指名制度に代わり01年より導入された新人選手獲得制度。各球団はドラフト会議前に大学、社会人の有力選手を2人まで自由に獲得して、同会議1週間前の締め切りまでに契約締結内定選手として公示することが可能になった。同枠で獲得された選手を他球団は同会議で指名できない。同枠を一つ使用した球団はドラフト会議で1、3巡目の指名ができず、二つとも使用した場合は3巡目までの指名ができなくなる。

ウェーバー制度

 順位の低い球団から順に希望する新人選手を獲得する新人選手獲得制度の方式の一つ。重複指名はできない。現在の日本のドラフト自由獲得枠ウェーバーが併用される。日本の場合、1巡目は競争入札、つまり抽選方式だが、2巡目以降はウェーバー制となる。今季の順位が低かった球団から指名していく制度で、3巡目以降はウェーバー、逆ウェーバーを繰り返す。
 MLBのドラフトは、指名順はFAによる指名権譲渡などの場合を除き前年度の成績によるもので今日の日本のドラフト制度と区別して完全ウェーバー制度と呼ばれる。


ウェーバー公示

 支配下選手の保有権を放棄しようとする球団が、放棄前に他球団に譲渡を希望するか否かを公示すること。

裏金問題

 スカウトらが「栄養費」「タクシー代」などの名目でドラフトでの獲得を狙う一部の有力選手らその指導者などに対し金品を与える行為。日本学生野球憲章ではスカウトからの金品の支給や貸与を厳しく禁じている。日本高校野球連盟は04年プロ側と裏金などのスカウトに関する不成行為を厳しくとりしまるドラフトに関する3項目の覚書を交わした。しかし、裏金の存在は球界の常識とされ、93年の逆指名制導入以降、億単位の裏金の存在が囁かれるようになり、裏金による新人獲得競争は激しくなった。04年の一場問題では3人のオーナーが辞任する大騒動へと発展した。今日のドラフト制度の欠陥と不透明な球団経営が生んだ球界の抱える構造的問題として不明朗な金銭授受の温床となる自由獲得枠の見直しと球団経営の透明化を求める声が高まっている。

フリーエージェント制度(FA)

 MLBで76年に導入された選手契約を無条件で解除され(自由契約)どの球団とも自由に契約ができる制度。。1シーズンを172日 とし、計1032日(6シーズン分)メジャー登録された選手が取得できる(故障者リスト期間中も含む)。契約満了時に再度FA資格を取得できる。相手球団への保証はドラフト指名権の譲渡で行われる。この後80年代にかけ選手年俸の高騰を呼び当時のMLB財政危機の一因となった。
 日本では87年にプロ野球選手会から試案が出され、93年に制度化された。 1シーズンを150日とし、計1350日(9シーズン分)に達した選手が取得できる。再取得までの期間は4年。相手球団への保証は元所属球団に年俸の80%の補償金または年俸と同額の補償金プラス人的補償(*プロテクト28人以外から1名に対し1名)。2回目以降のFA宣言選手については年俸の40%の補償金または年俸の半額の補償金プラス人的補償(*同)となる。外国人選手及び海外移籍に関してはこの補償金は発生しない。日本でもFA制度によりこの10年で選手平均年俸は3倍に高騰した。日本の球団経営悪化と戦力の偏りの原因とされる。

年俸減額制限

 年俸(選手参加報酬)減額を制限する制度。その年度の年俸が1億円を超える場合30%、1億円以下の場合25%を超えて減額してはいけないことになっている。選手年俸の高止まりの原因ともされており、プロ野球構造改革協議会でのこの制限の緩和が討議されることになっている。

年俸最低保障

 野球協約によって定められた支配下選手の年俸の最低額。現在は年額440万円と定められる。MLBの年俸最低保障は以下の通り。

MLBの年俸最低保障
メジャー
25人ロスター
300万ドル
40人ロスター
40万ドル
AAA
(月額)2,150ドル
AA
(月額)1,600ドル
A
High
(月額)1,250ドル
Low
(月額)1,150ドル

外国人枠

 チームにおける外国人選手の支配下登録、1軍選手登録などの人数を制限する制度。36年「監督および選手規定」により外国人の登録には理事会の承認が必要とされた。開戦までに19名の外国人選手が在籍した(内15名は日系外国人)が、54年に1チーム3名(1軍2名まで)に外国人の登録を制限する外国人枠が誕生した。日本人選手の出場機会の確保によりわが国の野球技能及び野球文化の発展に寄与することが表向きの理由であった。経営者側の要請により94年より外国人枠を1軍3名までに緩和、96年には1チームの人数制限を撤廃した。98年に1軍4名(投手2名野手2名)に改正、02年に外国人選手の同時出場を最大3名から現行の4名に緩和した。選手会などは選手側の雇用機会の確保のためにこの制度の維持を求め、制度緩和に強硬に反対してきた経緯がある。

代理人制度

 選手の雇用・肖像権などの交渉や契約をその専門家である代理人が代わって行える制度。大リーグで選手会の力が強くなった70年に交渉代理人として導入。選手が契約を交渉のプロに任せる権利を得たことで、選手の権利が拡大された反面、年俸の高騰を生んでいる。現在の米国のプロスポーツでの契約は複雑かつ多岐に渡ってなされ経営者との契約書は「電話帳」とも呼ばれる程で、代理人は選手にとって必須の存在となっている。
 日本では92年古田選手(ヤクルト)が契約更改に代理人を起用したことを契機に選手会と経営者が対立。00年に経営者側が妥協し容認された。しかし、代理人は弁護士に限定されており1代理人1選手と限定されるなど制度的に不十分であり、また、巨人・渡辺オーナーが「代理人を連れてきたら年俸カット。それがいやなら自由契約」と発言するなど自由に選手が代理人を利用できる環境とはいいがたい。日本で選手の代理人となろうとするものは選手会代理人登録が必要となる。

サラリーキャップ制

 戦力の均等化と年俸の高騰防止及び経営の健全化のため、各チームの選手の総年俸の上限の制限を毎年規定する制度。 94年からこの制度を導入したNFLでは、そのシーズンのリーグ総収入の一定割合(約63%)が選手の総報酬額として割り当てられる。これをNFLのチーム数である32で割ったものが、その年のサラリーキャップ額となる(チームの年棒上から51番目までの選手がサラリーキャップの対象となる)。収入の一元管理とその公明性の確保がその導入の必要課題とされる。大リーグ(MLB)では、93年から始まった労使交渉で機構側がサラリーキャップの導入を提示したが選手会はそれに反対しストライキに突入、94年シーズンは中断し野球人気に大きな影を落とした。

ぜいたく税(ラグジュアリータックス)

 年俸の抑制と各球団の戦力均衡を目的にチームの年俸総額が基準額を超えた場合、その額と回数に応じその超過分に一定の率をかけて徴収する制度。大リーグでは、まず97年から99年までの3年間導入された(課税率34%)が、その間も大リーグの年俸は上昇し、実効性がないとして廃止されていた。03年から発効した大リーグ機構と選手会の労使協定では、4年ぶりに課徴金制度が復活した。チームの年俸総額(40名ロスター分)が基準額を超えた場合、超過分に一定の率をかけて徴収する。徴収されたいわゆる「ぜいたく税」は〈1〉50%が選手の年金基金〈2〉25%が野球産業の育成〈3〉残り25%は高校野球制度を持たない国の選手育成基金――に充てられる。適用1年目の昨年はヤンキースだけがこの基準額を上回り、課税された。この制度では基準額、税率ともにスライド制を取る。今季は基準額が1億2050万ドル(約135億円)、税率は22.5%(2年連続超過の場合は30%)に上昇した。
基準額
税率
1回目
2回目
3回目
4回目
03年
1億1700万ドル
17.5%
04年
1億2050万ドル
22.5%
30%
05年
1億2800万ドル
22.5%
30%
40%
06年
1億3650万ドル
0%
40%
40%
40%

参考文献:
SPORTO! 「課徴金制度」って何?

nfljapan 「サラリーキャップ制度」
JIMMY'S STRIKE ZONE 「フリーエージェント制の導入」
プロ野球外国人選手名鑑 「外国人選手の歴史」
号外メジャーリーグ 「ロスタールールとFA」




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